アマゾン熱帯雨林は、世界最大の生物多様性を誇る地域ですが、その下には人類の歴史も眠っています。最近、エクアドルのウパノ渓谷で、レーザー技術を用いた調査によって、2500年前の大規模な都市遺跡が発見されました。この発見は、アマゾンに住む人々の文化や社会に関する新たな知見をもたらすとともに、環境との共生のヒントを示しています。
レーザーで見えた古代都市
今回の発見には、自動運転にも使われるLiDAR（Light Detection And Ranging）という技術が重要な役割を果たしました。LiDARは、レーザー光を使って地表の高低差や形状を測定する技術で、森林や雲などの障害物を透過して、地下に埋もれた遺跡を探し出すことができます。LiDARは、考古学でもその威力を発揮しており、特に植生に覆われた地域で、遺跡の発見や調査に役立っています。
今回、エクアドル国立文化財研究所が、エクアドル東部のウパノ渓谷の調査を支援し、LiDARを搭載した飛行機を飛ばして森にレーザーを照射したところ、驚くべき発見がありました。
なんと、そこには約2500年前に造られた古代大型都市の遺跡が存在していたのです。この都市はキラモペとウパノという2つの大きな遺跡と24の小さな遺跡からなる広大なネットワークが形成されており、エジプトのギザ台地やメキシコの巨大都市テオティワカンに匹敵する規模だというのです。
LiDARの画像から、この都市には丘陵に作られた段々畑や、長方形の農耕地、排水路、相互に連結された道路、6000の土塁の上に建てられた住居や、儀式用の建造物などが見つかりました。この都市に住んでいた人々は、おそらく農業が中心の生活だったと考えられています。人々はトウモロコシやサツマイモを食べ、甘いビールの一種である「チチャ」を飲んでいたというのです。
2500年前の文明の謎と魅力
今回発見された遺跡に人間がいた時期はかなり長く、紀元前500年ごろから、西暦300年〜600年ごろに及ぶと考えられています。この時期は、エジプトのピラミッドやメキシコのテオティワカンとほぼ同時期にあたります。この遺跡の一部の存在そのものは20年前から知られてはいたのですが、最近の調査でその規模が想定以上だったとわかりました。
この遺跡は、マヤパン文明と呼ばれる古代文明の一部であると考えられています。マヤパン文明は、エクアドルのアマゾン流域に紀元前1000年ごろから存在し、紀元後1500年ごろまで続いた文明です。マヤパン文明は、アマゾンの自然環境に適応し、農業や陶器、金属加工などの技術を発展させました。また、天文学や数学、暦法などの知識も持ち、独自の文字や芸術を創造しました。
この都市に住んでいた人々やその社会については、まだあまり分かっていません。彼らはどのような言語や文字を使っていたのでしょうか？どのような信仰や文化を持っていたのでしょうか？どのような政治や経済のシステムを築いていたのでしょうか？そして、なぜこの都市は滅びてしまったのでしょうか？
考古学者たちは、これらの謎を解くために、さらなる発掘や分析を行っています。しかし、アマゾン熱帯雨林は広大で、アクセスが困難な場所も多く、調査には多くの時間と資金が必要です。また、アマゾン熱帯雨林は、違法な伐採や開発によって破壊されている危機にあります。このままでは、古代文明の遺跡も失われてしまうかもしれません。
アマゾンとの共生の教訓
今回の発見は、アマゾン熱帯雨林には手つかずの原生林で、少人数しか住んでこなかったと考えられてきた従来の見方に挑戦するものです。実際には、アマゾンには複雑な都市が形成されており、人々は自然との調和の中で暮らしていたのです。今回発見された遺跡の人口について、フランスの国立科学研究センターの共同研究者、アントワーヌ・ドリソン氏は、ピーク時は1万5000人から3万人だったと推測しています。
アマゾンの人々は、自然の恵みを利用しながら、環境に負担をかけないように工夫していました。例えば、段々畑や排水路は、水はけを良くし、土壌の栄養を保つために作られました。また、土塁の上に住居や建造物を建てることで、洪水や虫から身を守るとともに、土地の有効利用を図りました。さらに、植物の種類や配置を工夫することで、食料や薬用植物の確保や、気候の調節や病害虫の防止などの効果を得ました。
まとめ
アマゾン熱帯雨林に眠る古代文明は、私たちにとって貴重な歴史の宝です。この発見は、アマゾンに住む人々の歴史に関するこれまでの知見を変えるものです。私たちは、この古代文明の遺産を尊重し、保護し、学ぶ必要があります。そして、アマゾン熱帯雨林の自然と共生することができるのか、私たちは考えるべきです。
しかし、この古代文明は、なぜ滅びてしまったのでしょうか？高度な文明や社会を築いたにも関わらず、誰も近寄らせない密林となったのは、どのような理由があったのでしょうか？気候変動や疫病、戦争や内紛、あるいは自然との調和を失ったことが原因だったのでしょうか？それとも、彼らは自らの意志で、文明の喧騒から離れて、森の中に隠れたのでしょうか？
私たちは、まだこの古代文明の謎を完全に解明することができていません。しかし、彼らの遺した遺跡や文化は、私たちに多くのことを教えてくれます。アマゾン熱帯雨林に眠る古代文明の驚きは、私たちの想像力を刺激し、私たちの歴史観を広げるものです。
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